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アウトプットから始まる「人間関係形成力を育むための授業」づくり
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COTECHI
COTECHI

こんにちは、COTECHIです。

皆さんは仕事や勉強において学んだことを「アウトプット」していますか?

勉強や仕事ができる人は、アウトプットを大切にしていると言われます。

アウトプットって、どうして大切なのでしょうか?子供たちにどのように身に付けていけばよいのでしょうか?

他の人の個性を理解したり、他の人に働きかけたりするコミュニケーションのスキルなどを高めていくためにも、表現力・発信力(アウトプット)の正しい高め方が必要ですね。

アウトプットする言葉や言語の捉え方

「人間は、考えるために生まれてきている。ゆえに、人間は、ひと時も考えないではいられない生き物である」「人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかし、それは考える葦である」

哲学者であるブレーズ・パスカルの死後、整理され出版された『パンセ』に残されたこの言葉の通り、人は、常に何かについて、考え続ける存在であると言えます。

人は、言葉を使って、他の人と思考交換を行います。

もっと言えば、自分の思考自体も言語があるからこそ、さまざまな考え、思いなどを持つことができます。

こうして、私たちが脳内で言語を使って、考えたり、思ったりすることを、今度は、言葉にして、他の人に伝えることは、訓練が必要だと言えます。

脳内で言語を使って・・・と言いましたが、そこには、明確に言語化して思考しているという意識は乏しく、頭の良い人は、独り言を言いながら、考えていることを言葉として理解することで、そうして、自らの考えをさらに深めていこうとしているといえますが、多くの子供たちは、頭の中で思ったことを、イメージや動画のようなものでとらえたり、時には、突発的に、感情から湧き出た言葉を発したりもします。

そこで、こうした傾向が強く現れる子供に、「言葉」として明確に、認識させて、それを、例えば、「T字型思考法(※後述)」のようなものを使いながら、さらに、考えを深めたり、広めることによって、「よく考える」 という状態や習慣をつくっていくことができます。

ここまで話したように、「言葉・言語」には、大きく2つの役割があって、「考える」ということと、「伝える」ということです。

そして、「考える」ための言葉というものと「伝える」ための言葉を、自分自身の中で、どれだけ意識できていて、どれだけ意識させているかということが、とても重要です。

そのために、指導者(教師)は、「考える」ための言葉と、「伝える」ための言葉の両方について、その役割の違いと指導の仕方の違いを明確に持って、その場面場面ごとに、子供たちに教えて、身に付けさせていく必要があります。

私は、授業の中で単純に、「考える」ための言葉を育む第1の場を、「ひとり学び」の場で、そして、「伝える」ための言葉を育む第2の場を、『学び合い』の場と区別して取り組むのがよいと思います。

もちろん両方の場で、それぞれの言葉の力を育んでいくのがよいのですが、大勢の子供たちを指導の対象としている先生方には、そのように単純化して指導を行う方が、合理的で効率的に指導しやすく、評価もしやすいからだと思うからです。

「ひとり学び」思考がどんどん深くなる「T字型思考法」-考える言葉-

先に述べた「T字型思考法」とは、「世界は、誰かの仕事でできている」(缶コーヒージョージアのCM)や「バイトするなら、タウンワーク」(求人メディアタウンワークんのCM)などといった、とても私たちの脳内に印象として残すキャッチコピーを生み出し続けている、(株)電通のコピーライターである、梅田悟司氏の著書『「言葉にできる」は武器になる。』の中で、提唱されておられる、「思考を進めていくための考え方」です。

具体的に何をどうするかというと、頭の中に浮かんでいる何となく「漠然とした考えや思い」を「言葉」として、紙に書き出したあとに、それを「なぜ?」→「それで?」 「本当に?」の「3つのキーワード」を使って、さらに拡張させていくという考え方、方法です。

下の画像のように、はじめの言葉を中心に「T」の形になるように思考が進んでいくため、梅田氏は、「T字型思考法」と名付けたのだそうです。

T-shaped thinking method

「なぜ?」、「それで?」、「本当に?」の3つの問いかけが、有効に働いていく役割について、梅田氏は以下のように記しています。

この「なぜ?」「それで?」「本当に?」の3つの言葉には、それぞれに違う方向に思考を進めさせる役割がある。「なぜ?」は考えを掘り下げる、「それで?」は考えを進める、「本当に?」は考えを戻すことである。

梅田悟司 著 (2016),『「言葉にできる」は武器になる。』(日本経済新聞出版社)

以上のように、思考の元木につながるその枝葉を広く長く伸ばしていってやることにより、子供たちがそれまで、何となく持っていた、明確となっていなかった考えや思いが明瞭になったり、自分の中に眠っていた、あるいは漠然と感じていた本当の思いに気づかされたりすると考えるのです。

子供たちだけでなく、大人であっても、自分では、その時は、精一杯考えているつもりであっても、なかなか明確な言葉にならない場合があるのは、自分の思いや考えを、焦点を当てて、明瞭にとらえられないことが原因のひとつであると考えられます。

ただ何となく、頭の中で、思考しているだけでは、速いスピードで流れ、さらに消えていってしまう自分の思考をつかまえることは、非常に困難であるといえます。

それは、子供ならなおさらであり、そうした毎日、毎時間を過ごしていれば、それは当たり前な日常としての、思考のキャッチ方法として、習慣化、常態化してしまっています。

そのような意味では、自らに、強制的に「問いを投げかけ」て、その結果、表出されてきた言葉のひとつひとつを紙に書き下していくという作業は、自分の思いを正確にとらえるのに役立ち、必ずや思考に広がりや深みをもたらしてくれることでしょう。

その際、「T字型思考法」を実践する紙は、自分用のメモであるため、誰かに見せる必要はありません。

無理に整った言葉をひねり出そうとするのではなく、思いついたままに書いていきましょう。

慣れないうちは少し時間がかかるかもしれませんが、それもまた自分自身の思考としっかり向き合っている証拠です。

こうした習慣を日常の生活、特に授業などの学習の時間や生活の振り返りに生かしていくことは、それまで全く思ってもみなかったことを思いついたり、自分の中で眠っていた考えが呼び起こされたりすることに大変有効的に働くことでしょう。

こういう方法なども取り入れながら、「ひとり学び」における自分の考えや思いをしっかり持たせていくことが、この後に展開されていく『学び合い』学習をより効果的なものとしていきます。

『学び合い』は、アウトプットから始まる‐伝える言葉‐

人間関係力を育む授業づくりを行うにあたって、まず、一人一人のそれまでの学びの積み上げを大切にします。

課題に対し、既に身に付けている、習得しているの知識だけでなく、自分で「わかるようになってきたこと」や「できるようになってきたこと」を想起させ、問題の場面や状況を自分自身の学びを通してとらえることができるようにすることがねらいです。

このことは「基礎学力」の確かな獲得だけでなく、自らの学びを他の友だちに伝えたり(アウトプット)、友だちからの反応を聴き合ったり(フィードバック)、他の人の学びや発信に共感したり、異を唱えたりして、新しい気づきをして考え直し(アンラーニング)をしたりして、新たな価値を創造(クリエーション)していく「思考力・判断力」の育成につながっていきます。

『学び合い』 の条件を明確にする

次に、個々の学びを互いに認め合うことを大切にした『学び合い』に入ります。

そこで、学級で複数のチームを構成し、互いの学びに基づいた交流を多様に位置付けます。

チームとは、単なるグループとは異なり、次の条件を満たす集団であると考えます。

  1. 達成すべき目標が存在すること・・一人も見捨てない。みんなで勝つ(わかる)こと。
  2. 成員同士が目標達成のために互いに依存し合う関係にあること・・助け合うこと。
  3. 各個人に果たすべき役割があること・・・みんなの役に立つ動きをつくること。

です。

そして、そのチー ムでの交流は、単なる確認の場や考えの出し合いの場ではなく、『学び合い』『助け合い』を共有する場であり、新たな価値や意味を生み出していくことができるようにすることを大切にします。

そうすることで、情緒的な発信力、意志的な発信力、合意形成力を活発に働かせて、人間関係形成力が育まれます。

具体的には、次の3点から、単元または1時間の授業を工夫します。

(1) 明確なチー厶の目標を設定すること

目標設定の上で大切なことは、集団で取り組むことで作業を効率化するのではなく、適度に困難な課題を解決したり、新しいことを創造したりすることを目指した目標にすることです。

そして、「一人も見捨てない」こと、または「みんなの力が伸びること」「みんなが力を発揮すること」を目標にすることです。

こうした学習像を子供と教師が共有することで、子供を主体とした学習を展開することができ、一人一人に学びを身に付けた自信やチームに役立ったという有用感をもたせることが期待できます。

(2) チー厶と個の活動を組み合わせて活動を構成すること

授業者は学習過程の構成において、チームの活動と個の活動をどの場面で、どのように展開するとより効果的に進められるかを考えて、計画します。

チームの活動と個の活動の接続には、基本的に次の4つがあります。

思考の過程 アウトプット フィードバック アンラーニング クリエーション
往還スタイル 個 → チーム チーム→個 チーム→チーム  個 → 個
子供の意識 個で考え、思考したことを集団で出し合い、違いや共通点を見つけようとする。 集団で話し合い、互いに考え、思考したことを確認して、個々の役割に応じて遂行しようとする。 集団で話し合い、感が割ったことから生まれた新たな課題を集団で解決しようとする。 個々で再度考え直したしたことを発展させてさらに役割に応じて遂行しようとする。

大切なことは、子供の意識、考え、思考が、常に「個」と「集団」の間の行き来をし、往還させ、最終的には、「個」として「基礎学力」「思考力・判断力」を身に付けたり、「人間関係形成力」を身に付けたりすることを想定することです。

(3) シンキングツールを活用すること

チームで問題を解決しようとするとき、私たちはお互いに様々なアイデアを出し合うことに よって、よりよい解決を図ることができます。

そのための手がかりとなるのが「シンキングツール」です。

学習の中で思考する内容は、教科等によって違いがあります。

その教科等で大切にしたい内容から発想して、シンキングツールを活用します。

毎日の生活で育んでいきたい4つの力

人を大切にする力 (人間形成・社会形成能力)-他者を尊重し話し合う互恵的な力-

他の人の個性を理解したり、他の人に働きかけたりするコミュニケーションスキルや、チームワークをはかるのに欠かせないリーダーシップやフォロワーシップなどのことです。

  • 友達の話を聞くとき、その人の考えや気持ちを受け止めようとする。
  • 相手にわかりやすく伝わるように工夫しながら、自分の気持ちを伝える。
  • 自分から役割や仕事を見つけたり、分担したりしながら、友達と力を合わせて行動する。

自分を大切にする力(自己理解・自己管理能力)-信念をもって活動する力-

自己の役割の理解や、主体的な行動のための動機付け、物事を前向きに考える力や忍耐力、ストレスと上手に付き合う力のことです。

また、これからの個や集団のよりよい成長にむけて、進んで学んでいこうとする力です。

  • 自分の興味や関心、長所や短所などについて、把握する。
  • 気持ちが沈んでいる時やあまりやる気がない物事に対する時でも、自分がやるべき物事は取り組む。
  • 不得意や苦手なことでも、自分から進んで取り組む。

考える力 (課題対応能力)-計画を立て課題を解決する力-

情報の理解や選択、手続きを進めるなどの力、本質を理解したり原因を追究したりする力、子や集団の課題を発見し、その改善に向けて計画を立て、実行する力などです。

  • 分からないことやもっと知りたいことがある時、自分から進んで資料やデータを集めたり、誰かに質問したりする。
  • 何か問題が起きた時、次に同じような問題が起こらないように、何をすればよいか考える。
  • 何かする時、先々の行方の見通しを、明確にもって計画を進めたり、そのやり方などについて見直しを図ったりする。

チャレンジする力 (プランニング能力)-学習内容を実生活と結びつけて学ぶ力-

学ぶことや働くことの意義や役割の理解、生き方の多様性の理解、将来を設計したり選択したりし、改善、修正を繰り返しながら、いろいろなことに挑戦し続け、行動していく力のことです。

  • 学ぶことや働くことの意義について考えたり、今学んでいることと、これから迎える将来との関係やつながりを考えたりする。
  • 自分の将来について具体的な目標を立て、その実現方法について考える。
  • 自分の将来に向かって何事にも進んでチャレンジし、継続したり、生活や勉強の工夫をしたりする。

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