「読み書きそろばん」・・・日本の特に小学校では、寺児童屋の時代から重要視されてきた勉強内容です。
時代が変わっても、「読み書き計算」は、学習の基礎となるものに違いありません。
タブレットが導入され、書くことが疎かにならないかという心配がありますが、本校では、タブレットと鉛筆でノートに書くことを併用しています。
タブレットに組み込まれている漢字ドリル機能を辞書替わりにして、「読み」を確認し、ノートに書いている児童が授業の中でもよく見られますし、この後、何回か書き取り練習をした後、タブレットを用いて覚えたかどうか、確かめている姿も見られます。
ICT教育の「ICT」は、Information and Communication Technology の頭文字をとった言葉で、日本語の意味は「情報通信技術」ですが、学校では、通信技術を活用したコミュニケーションを意味します。
目次
「文房具のように」を合言葉に
これからの時代は、「読み書きそろばん」に加え、ICT(情報通信技術)も基本の一つとして重要になってきています。
「文房具のように」を合言葉に、タブレットの機能を使って授業を展開する光景が、本校においても増えてきました。
これは、文部科学省がすすめるGIGAスクール構想を本校が、積極的に学びに取り入れているからです。
変化の激しい時代を生きる子どもたちには、ICT端末を上手に使いこなしながら、さまざまな課題を周りの友達や先生と協働して解決していく力が求められています。
このような力を育てるために大切なのは、教員が自身の発想を変え、従来の授業方法を見直し改善していくための方法を考えていくことです。
とかくICTを使った教育では“技術”のほうに注目がいきやすいのですが、それを使う“人間”のほうにこそ注目すべきだと思います。
GIGAスクール構想とは 「Global and Innovation Gateway for All(全ての児童・生徒のための世界につながる革新的な扉)」
GIGAスクール構想とは、1人1台の情報端末を全国の小、中学校に配備し、学校において新しい学びの形を実現するための構想です。2019年12月に、文部科学省から発表されました。
「1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする児童供を含め、多様な児童供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する」「これまでの我が国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す」と、文部科学省から目指すところが示されています。
GIGAスクール構想は、新型コロナウイルス感染症への対策で学校が休校措置をとられたときに前倒しにされたこともあり、「オンライン授業のため」と捉えている人もありますが、広範囲に様々な学びの場面を変えることを目的としています。
1人1台の情報端末が整備されることで、児童はいつでもどこでも端末を使うことができるようになりました。
今までのようにコンピューター教室に行く必要も、他のクラスと使う授業の時間割を調整する必要もなくなりました。
ICTを活用した教育のよさは・・・
学習をする児童や先生のメリットとして、一人ひとりの習熟度にあった形で学びを進められる授業の実現がしやすいことです。
例えば、1人1台の情報端末を使って活用される「スタディサプリ」のようなデジタルドリルの多くは、一人ひとりの学習履歴に基づいて、問題を自動で出し分けることができます。
自動採点や採点に基づく自動出題も可能で、学年をさかのぼって復習をすることもできます。
教材を全員の端末に瞬時に送り、児童生徒は自分の端末で文章を書いたり、数字を分析したりして、それを先生に簡単に提出できるようになりました。
これは、ただプリント配布と提出が楽になった、ということに留まらず、授業の様子が大きく変わることにつながります。
今までならば手を挙げて発言しなければならず、恥ずかしくて意見を言えなかった児童の意見は、授業の中で取り上げられていませんでした。
しかし、授業支援ツールを使うと、その児童が書いた意見をみんなが見られるようになるので、いままでよりもずっと多くの意見や考えを授業中にやりとりできるようになります。
インターネットに接続してさまざまなコンテンツを見ることもできるようになり、わかりにくかったことを動画で説明を受けたり、最新のニュースを学習教材として使ったりできるようにもなってきています。
板書を画像として保存して復習に活用している児童もいます。
授業を受ける児童の最大のメリットは、表現と思考のアウトプットが増えることと試行錯誤を恐れず、いろいろな表現に取り組めることです。
例えば、漢字が書けないから作文が嫌いだった児童や、字が汚いから作文が嫌いだった児童が、キーボードを使ってどんどん文章を書けるようになることもあります。
また、文章を書き直す推敲(すいこう)作業もデジタルの方がずっと簡単なので、授業中にも文章を書き直す作業をどんどんするようにもなります。
ある児童は文章を書くだけでなく、自分で撮影した写真をつけて表現できるようになりました。
データ活用なども同様です。
理科の実験や社会科の統計データなどを表にまとめてグラフ化したり、将来の予測を推計したりするときには表計算ツールを使うことができます。
これまで手作業でしていた単純な計算のくりかえしをデジタルで行うことで、浮いた時間で計算の結果を分析し、その成果をディスカッションすることもできます。
子どもの自己実現のためのツールとしてのICT機器活用能力の育成を!
GIGAスクール構想によって配備された1人1台の情報端末は、児童の思考や表現の道具として活用され始めています。
ただ、こうしたスキルは、先の「読み書きそろばん」と同様に、学び取っていくものですので、新しい能力獲得が必要になります。
今の子どもたちが社会に出る頃には、デジタルを武器として使いこなせるようになっているほうが、自己実現のための選択肢は明らかに広がるでしょう。
そのためには、まず「小学校・中学校でデジタルを思考と表現の道具として使えるようにならなくてはならない。だから、1人1台の情報端末が配備されているのだ」という価値観を私たち大人が明確に持つがもつことが必要です。
将来の変化を予測することが困難な時代を前に、子供たちには、現在と未来に向けて、自らの人生をこうしたスキルも活用して拓(ひら)いていくことが求められています。
また、自らの生涯を生き抜く力を培っていくことが問われる中、新しい時代を生きる子供たちに、私たち学校教育は何を準備しなければならないのか、家庭教育では、何を大切にしなければならないのか・・・「読み書きそろばん」だけでは、対応できない未来社会は、もうやってきているのです。
紙を使用した学習とタブレットを活用した学習のメリットとデメリット
紙を使用した学習のメリットは第一に、教材の種類が豊富だということです。
書店の教材コーナーでは、紙の教材はさまざまな種類や仕様のものが数多く展開されています。
子どもの好みやレベル、学習傾向に合った教材を選べる上に、多様な問題にチャレンジすることもできます。
また、文字を書いたり図を書いたりと実際に手を動かしながら学習を行うため、脳に学習の記憶が残りやすいのも紙学習の魅力でしょう。
実際のテストなどでも正しい回答を書きやすくなります。
昔ながらの紙学習にはデメリットもあります。
まず、子どもが自発的に学習しづらいということです。
紙学習は「楽しむ」要素が少なく、どうしても「勉強」の要素が前面に出てしまいがちです。
また、紙の学習では教科ごとに教科書やノート、参考書などが必要となり、荷物がかさばることもデメリットです。
持ち運びの負担となる上に、どこまで学習したか管理が煩雑で忘れ物のリスクも生じます。
これらに加え、問題集などに直接書き込んでしまうと一度解いた問題をもう一度解くことができなかったり、文字を書くことにより時間や手間がかかったりと、紙学習には一定のデメリットがあるといえます。
では次に、タブレットを活用した学習を見ていきます。
タブレット学習のメリットとしては、子どもが興味を持ちやすいことが第一に挙げられます。
タブレット教材にはゲーム感覚で学習できたり、子どもが好む絵や色を用いたりと、興味をそそる工夫がなされたものが多く、楽しみながら学習できます。
同じ問題を繰り返し解くこともできますので、苦手分野の克服にも繋がるでしょう。
また、自動採点により解いた問題の正誤がすぐに確認できたり、学習履歴が残ったり、相対性評価や傾向などを共有することができるサービスがあったりと、学習結果を管理しやすく便利です。
教師や保護者がデータを見て子どもの学習状況を把握できます。
このように、紙学習にはないメリットを持つタブレット学習ですが、デメリットもいくつか挙げられます。
バッテリー切れや、圏外などにより使用できなくなる場合があります。
こういった場合には子どもの学習意欲の低下に繋がるかもしれません。
また、タブレット画面を見続けることによる視力低下も不安要素として挙げられます。
さらに、従来のドリル的な学習で育った保護者には、こうした家庭学習がゲームとの混同により、学習しているように受け取れないと心配する声もよく聞かれます。
学習にはタブレットと紙の併用が好ましい
紙学習とタブレット学習のメリット・デメリットを紹介しましたが、より効率的な学習のためには、これら2つを上手に併用することが大切です。
『人間の脳には2つのモードがある』と言われますが、人間の脳は、紙面を読む時には「分析モード」、画面を見る時には「パターン認識モード」 という別のモードで働きます。
分析モードでは、文字の間違いや文章の正しさなど細やかに対象を分析するのに対し、パターン認識モードでは全体を大まかにスピーディーに捉えます。
よって、学習の際にはこれらの特性を活かせるよう、工夫することが重要になります。
紙とタブレット両方のメリット・デメリットを活かすことが大切です。
例えば、しっかりと覚えたい、または間違いに気づく必要がある場合は紙とペンを使った紙学習、大まかに情報を捉えスピード感を大事にしたい場合にはタブレット学習を用いるという方法が効率のよい学習方法といえます。
紙に書いて学習を行うと間違いに気づき記憶にも残りやすいのですし、読書や作業などの具体的活動は、より体に経験として残り、情緒に触れる学習です。
一方のタブレット学習では勉強効率の高さを期待できます。
特に幼児から小学生の頃は学習内容の大まかな流れをつかむことも大切になりますので、紙学習だけでなくタブレット学習も積極的に取り入れることが望ましいのではないでしょうか。